KIRG第3回認定講習会 受講感想文
第31期 横溝裕次 (よこみぞ歯科 福岡県久留米市)
福田先生
口腔インプラント埋入手術は外科手術であり我々は日々の臨床であるが、患者さんにとっては「手術」というイメージで不安を与えやすく精神的ストレスの大きいものである
事実、講師の先生も口腔インプラント手術を受けられた際、血圧上昇をきたしたとのことで2回目は鎮静下に手術を受けられたとのことであった
したがって、我々は生体モニターで監視しながら疼痛管理、全身管理を行えるスキルを身につけなければならないし、患者さんが急変した際にはスタッフ一丸となって救急対応ができるチーム作りをやらなければならないと再認識した
また、口腔インプラント手術による神経損傷が患者さんの人生を大きく左右してしまうことがあるのでより一層気を引き締めて手術に臨まなくてはならないと感じた
竹下先生
講義のスタートは2007年の痛ましいインプラント医療事故であった
このような事故を起こさないためのステントの歴史を学んだ
講義では久々にパノラマトレースから解剖学的特徴を確認した
歯科用CTが普及する前はパノラマと金属球を利用して解剖学的構造からの距離を推測し、不透過性の材料を用いて作成した近遠心的方向を確認するだけの簡易的ステントを利用していた
その後歯科用CTが登場しデジタルデータでのプランニングができるようになり、3Dプリンターの登場でサージカルガイドの作成も正確になっていた
現在では光学印象と歯科用CTのデータを使って造形・設計するサージカルガイドが主流となりつつある
また最近ではノーベルバイオケア社のXガイドも登場し本当に安全な口腔インプラント手術が行えるようになった
しかしながらいつの時代も我々は解剖学的特徴をよく理解しそれぞれの器材の特徴を理解したうえで使用しなければ本当に安全な手術は確立できない
医療事故がゼロになることを切に願うばかりである
澤瀬先生
歯科専門医とは専門領域において適切な研修教育をうけ、十分な知識と経験を備え、患者から信頼される専門医療を提供できる歯科医師のことである
これまでの学会認定専門医から歯科専門医機構認定専門医へ移行することが決まったとのことで大変興味深い内容であった
また、歯科専門医医療広告ガイドラインをみると自院のホームページの改善が必要となることを知った
専門医取得に際しての条件については自身のケースの再考が必要であるし、資料の整理をやり直さなければならないと痛感した。学術用語集をみると日常たくさんの間違った用語を使用していることに気づかされた
澤瀬先生
今回の講義では診察・検査・診断を学んだ
単純に欠損部位に口腔インプラントを埋入する術式が大事ではなく、なぜこのような欠損状態になったのかを考えたうえで治療計画を考え、長期的に安定な咬合機能の回復を達成していくことが重要であるとのことであった
治療計画にあたっては患者サイドの要因も加わるためPOSの考えが重要視されている
1. Doctor Oriented System(DOS)
Doctor Oriented System(DOS)は、歯科医師中心のアプローチを意味する。この方法では、歯科医師が診断・治療計画を決定し歯科医師が治療の全過程を主導する
2. Patients Oriented System(POS)
Patients Oriented System(POS)は、患者の立場を最優先に考えた治療アプローチで、この方法では患者のニーズ、希望、不安などをしっかりと聞き、治療方針を決めていくことになる
補綴治療とは本当に難しいが、やりがいのある仕事でもあると感じた
堀川先生
歯科治療中の全身的偶発症の種類として神経原性ショックが最も多い
これは局所麻酔下での侵襲的処置は患者さんに強い不安と緊張を与えていることの表れであると考えられる
そこで口腔インプラント手術を安全におこなうため精神鎮静法を学んだ
1. 吸入鎮静法(笑気) 2.静脈内鎮静法
今回は静脈内鎮静法について詳しく解説していただいた
静脈内麻酔薬には色々な種類があるがベンゾジアゼピン系が使用しやすいとのことであった
実際の静脈内鎮静法の流れについても詳しく解説頂いたが経験のない私はもう少し詳しく勉強した上で導入していかなくてはならないと痛感した
飯島先生
口腔インプラント治療では種々のインプラントの中からその特徴を理解したうえで選択し使用する必要があり講義では細かく説明頂いた
中でもこれまでのインプラントの欠点を補ったインプラントが印象的であった
口腔インプラント治療で一番多い合併症はインプラント周囲炎であるがその対策として
1.マイクロギャップをなくす 2,ネジ穴なし 3,細い貫通部 4,マイルドラフサーフェイス 5,骨質に適応したスレッドのサイズ
口腔インプラントにおけるメカニカルトラブル(破折)対策として
1,エクターナルテーパーロックデザイン 2,テーパーが小さいこと 3,チタンキャップの使用 4,あそびを少なくする 5,インプラント、アバットメント、ネジの3層構造を避ける
インプラント治療における骨欠損への対応として
1, 骨再生後に骨サイズにあったインプラントの選択使用 2, 強く細いインプラントの選択 3, 骨質低下にそなえスレッドサイズの選択 4, 骨変化に対応するインプラントの選択
以上3つの問題点の解決策としてエクスターナルテーパーロックインプラント(ITインプラント)の選択が望ましいとのことであった
これまで全く知識のないインプラントで大変興味深いものであった
連結冠は口腔内接着法を用いることが重要であるとのことで、まだまだ知らなかった情報を得ることができた
佐藤先生
規格性のある口腔内カメラによる資料採取の重要性を説明していただいた
講義の中ではデジタル一眼レフカメラでの規格写真の撮影法、特徴について説明があり特に絞り、シャッタースピード、ISO感度について学んだ
一度は聞いたことがあったが、よく理解できていなかったため講義により理解が深まった
フラッシュについては口腔内全体の記録にはリングフラッシュが有利で局所や前歯部ではサイドフラッシュの方が細かい表現が可能とのことであった
今後は、院内で共通のルールを決め誰がとっても同じような規格写真が撮れ、長期的にデータを管理していけるシステムを構築いていきたい
KIRG 31期 第3回受講感想文
深町 太伊地 (医療法人ふかまち歯科クリニック 福岡)
1日目
『口腔インプラント埋入手術の全身管理、疼痛管理、緊急時対応』
福田謙一先生
口腔インプラント治療における偶発症についてご教授して頂きました。
バイタルサインを持続的に観察することで、緊急時に迅速に対応ができる。
酸素の供給が5分止まると脳死になるため、パルスオキシメーターを適正に装着する。
心電図で波形が安定しているのかを確認する。また虚血性心疾患の種類や特徴、緊急時の対処法を教えて頂きました。今まで、診療中の偶発症で緊急対応をする機会が無かったのですが、この講義を受講したことで必要な器具やスタッフとの連携を見直すことができました。
最後に実習で、静脈路確保を模型を使って練習できたので、実際の患者へのシミュレーションができました。
『ガイドからナビゲーション、ロボット』
竹下文隆先生
安全なインプラント治療のためのナビゲーションシステムをご教授して頂きました。
過去に起きたインプラント患者の死亡事故を参考にして、術前CT撮影とシミュレーションの必要性を確認した。実際にノーベルバイオケア社のシュミレーションソフトを使用して、安全で正確なインプラントポジション設定を学習できた。また、最新のナビゲーションシステムであるXガイドも実習できたので、新鮮で興味深い体験となりました。最後に日本ではまだ未承認であるロボット支援型歯科インプラント外科の進歩に驚きました。インプラント手術の未来予想図を少し垣間見ることが出来ました。
『ケースプレゼンテーションの進め方 専門医制度』
澤瀬隆先生
インプラント専門医を取得するための条件をご教授して頂きました。
専修医と専門医取得に必修であるケースプレゼンテーションの作り方を教わりました。
口腔内写真とエックス線写真の条件が細かく規定されており、術前の規格写真が取れていなければ症例にならないと痛感しました。また、経過報告ではインプラント部位以外に問題があれば経過不良となるため、咬合に問題が無く、カリエスリスクやペリオリスクが少ない症例を探すべきだと思いました。
2日目
『インプラントの局所検査と治療計画』
澤瀬隆先生
インプラント治療の診察・検査と診断、治療計画についてご教授して頂きました。
局所状態の診察・検査に、全身的な診察・検査を交えて総合診断を行う。また、リスク因子を患者と共有してインプラント治療を行うかを決定する。インプラント治療が決定すれば、患者側と術者側の考慮すべき点を挙げて、その中から最適な治療計画を作成する必要がある。術前の診察・検査と診断の重要性を確認できました。
『静脈内鎮静法の理論と実際』
堀川正先生
静脈内鎮静法について臨床に則してご教授して頂きました。
歯科治療中の全身的偶発症の中で神経原性ショックの割合が最も多く、患者の不安と緊張をコントロールする必要があり、それには静脈内鎮静法は有効であると感じました。
使用薬剤はミダゾラムが半減期も短く、最も使用しやすい様で、堀川先生の臨床データを拝見しながら、使用法や注意事項などを詳しく教えて頂きました。
『各種インプラントの臨床』
飯島俊一先生
各種インプラントの特徴とそれを活かした臨床をご教授して頂きました。
インプラント治療の合併症で最も多いインプラント周囲炎の予防には、細くて強くマイクロギャップがないインプラントが有効である。テーパーロックタイプはマイクロギャップがないためインプラント周囲炎の予防には有効であり、ネジ穴が内部にないので強度も高い。
ショートインプラントやGBRの症例も拝見することができ、患者の歯槽骨の吸収量を経過観察することで、どの種類のインプラントを選択するかを決定している点は大変参考になりました。
『口腔内規格写真撮影』
佐藤隆太先生
口腔内企画写真の撮影法とデジタル一眼レフカメラについてご教授して頂きました。
口腔内写真の5枚法をピントの位置から倍率まで詳しく教えて頂きました。
その次にデジタル一眼レフカメラについて、絞り・シャッタースピード・ISO感度を中心にわかりやすく解説していただけました。私は臨床で普段からデジタル一眼レフカメラを利用しています。今までは、それぞれの設定値を理解せずにいましたが、講義を受講することで、その基礎知識を再確認することが出来ました。
どの講義も大変勉強になりましたので、自分の臨床に役立てると思います。
これからの講義や実習も楽しみにしておりますので、今後ともよろしくお願い致します。
2025年6月 KIRG認定講習会 受講感想文
第31期 中川 紗伽(佐賀 中川歯科医院)
福田謙一先生 「麻酔と全身管理、救命応急処置」
治療開始前に全身状態の把握、予備力の推測が重要であることを学びました。全身疾患があったり、多くの内服薬を内服していたりする患者に対して、何に気をつけて診療を行うべきかを理解した上で治療を進めていく必要があると感じました。また、血管迷走神経反射は若い方に多いということを知り、全身疾患がなく若いからと油断してしまうのではなく、どんな患者でも偶発症は起こりうるということを念頭に置いて診療に臨むべきであると感じました。
竹下文隆先生 「サージカルガイドとシミュレーション」
ステント作成時の注意点やCTを用いたシミュレーションについて学ぶことができました。パノラマ画像をトレースする際に自分がよく理解できていない部分があることに気づき、画像についてももう一度理解を深める必要があることに気づきました。ロボットを用いたインプラント埋入などの最新の技術も知ることができ、興味深く感じました。
澤瀬隆先生 「専門医制度ケースプレゼンテーション」
今まで、専修医や専門医取得についてなんとなくの知識しかなく、イメージがついていない部分が多くありました。今回の講義を聞き、これから自分が治療を行う際に行うべき事項や申請の際に気をつけなければならないことについて学ぶことができました。2年目の自分にはまだ先の話だと思ってしまっていましたが今後のイメージをつけることができたように感じました。
澤瀬隆先生 「インプラントの局所検査と治療計画」
インプラント治療を行う際に行うべき診察、検査について学ぶことができました。多方面からの診察をしっかりと行うことで正確な診断が可能であり、それぞれの項目が症例によっても重み付けが違うことを念頭に置いて診断しなければならないという事を知りました。また、適切な治療であるとともに患者の希望に応えるためには自分自身が多くの知識と広い視野を持って治療方針を提案することができるようになる必要があるということを学び、学び続ける姿勢を忘れずにいようと思いました。
堀川正先生 「静脈内鎮静法」
静脈内鎮静法の概要や流れ、使用される薬剤の作用や特徴、起こりうる合併症について学ぶことができました。薬剤や方法については大学の講義等でも学んだことはありましたが、実際の薬剤投与後のSpO2や血圧の推移について知ることができ、大変勉強になりました。鎮静法を使用する際には合併症やその対処法までしっかり学んだ上で行うことが大切であると感じました。
飯島俊一先生 「各種インプラントの臨床」
表面性状やインプラントの形態、固定方法等様々な種類の特徴を持ったインプラントについて学ぶことができました。骨や軟組織の状態を診察し、それぞれのインプラントの特徴をよく理解したうえで患者、症例に合った適切なインプラントを選択することが治療の成功の鍵となるということを学びました。まだまだ知識不足で知らないことが多くあったため、これから学びを深めていかなければならないと感じました。
佐藤隆太先生 「口腔内写真撮影」
現在も診療中に5枚法の写真を撮っていますが、何に気をつけて何を写すべきなのか理解できていないままに撮影していることも多くありました。一眼レフカメラの操作やレンズの種類も知らない部分が多く、大変勉強になりました。口腔内写真は専門医の申請に必要なだけでなく自分の治療経過や成果の記録になるため、今回学んだことを活かして撮影に取り組みたいと思います。
1回1回学ぶことが多く、よく理解できなかった部分や知識が不足している部分を調べながら復習に追われていますが、より多くの事を学び、成長できるよう残りも精一杯頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。
加来敏男会長挨拶
福田謙一先生「麻酔と全身管理、救命応急処置」
真剣な眼差しの受講生
福田謙一先生・堀川正先生指導による点滴実習
福田謙一先生・堀川正先生指導による点滴実習
福田謙一先生・堀川正先生指導による点滴実習
福田謙一先生・堀川正先生指導による点滴実習
竹下文隆先生「サージカルガイドとシュミュレーション」・実習
竹下文隆先生「サージカルガイドとシュミュレーション」・実習
竹下文隆先生「サージカルガイドとシュミュレーション」・実習
竹下文隆先生「サージカルガイドとシュミュレーション」・実習
澤瀬隆先生 「インプラント局所検査と治療計画」
活発な質疑応答
活発な質疑応答
活発な質疑応答
堀川正先生 「静脈内鎮静法」
飯島俊一先生 「各種インプラントの臨床」
佐藤隆太先生 「口腔内写真撮影」