2024年度 九州インプラント研究会第1回講習会を終えて
稲城ふじせ歯科クリニック 藤瀬和隆
いよいよ第30期の認定講習会が始まりました。基礎的な内容がメインでしたが、初日から2日目まで、いずれの講義も本当に興味深い内容でした。
1日目
・伊東 隆利先生「開講式、講習会概説」
はじめに伊東先生からの開校に当たる本研修会の概要説明をして頂きました。KIRGの成り立ちや現在に至るまでの歴史を理解することができました。その上で、素晴らしい先生達から教えて頂く機会を得られて、今回参加できることの嬉しさを実感することができました。
・鮎川 保則先生「インプラントの歴史 インプラントシステムの種類と表面性状」
現在の歯根型に至るまでのインプラントの歴史について知ることができました。特に粘膜内インプラントの画像はかなりインパクトがありました。また表面性状についても詳細を知ることができました。表面の荒さは中等度の粗面が望ましいことがポイントで、他にもサンドブラスト、酸エッチング、陽極酸化処理、HAコーティング等の種類があることを知りました。また超親水性表面はオッセオインテグレーションを促進すること、またアバットメントの連結様式などの解説もありました。
・阿部 伸一先生「顎顔面インプラントのための口腔解剖」
母校の解剖学でも阿部先生の講義でお世話になったために久々の受講できて嬉しくもあり、以前学んだことの復習にもなりました。下顎においてはレトロモラーパッド付近の舌側の剥離は舌神経に注意することや顎舌骨筋線周囲の解剖では舌下動脈の分岐に注意することや下歯槽神経の上縁も画像に映ってきにくいことも学びました。また上顎洞の構造についても理解が深まりました。実践に基づいた講義内容で、オペに必要な解剖学的な知識の整理に非常に役立つ内容となっていました。
・湯浅賢治先生「インプラント診療における画像診断支援」
内容としては、歯科診療におけるX線撮影の基本、CBCTと医科用CT、アーチファクトについて、放射線防護についてでした。二等分法と平行法についての解説などがありました。国家試験の過去問なども交えての解説で知識が深まりました。
2日目
・和泉雄一先生「天然歯とインプラントの相違 解剖・細菌・免疫」
まず天然歯とインプラントの相違について解剖学的や組織学的な違いについての説明がありました。天然歯と比較するとインプラント周囲の上皮の付着はより低い位置で基底膜とヘミデスモゾームを介して付着しているため、上皮性付着が脆弱で容易に細菌侵入が起きる。インプラントの結合組織は天然歯と比べてコラーゲンが多く、線維が少なく、血液の供給もインプラントは骨と粘膜からのみなされることなどを学びました。
2017年の歯周疾患・インプラント周囲疾患の分類についても解説がありました。
他にも細菌学的や免疫学的な内容の講義がありました。
・伊東隆利先生「インプラントの医療安全」
医療安全についての講義内容でした。ヒヤリハット対策や感染予防についての解説がありました。普段の診療における診療体制を見直すのに非常に有益な内容となっておりました。
・阿部成善先生「医療面接とインフォームドコンセント」「クリニカルパス 全身疾患の影響」
インプラント治療おいて患者とのトラブルを防ぐために必要な内容が網羅された内容でした。インフォームドコンセントや同意書の作成の仕方など、高血圧症や糖尿病の患者など有病者への対応についての説明がありました。また薬剤関連顎骨壊死のポジションペーパーについての解説もありました。ホームページなどの医療広告規制についての説明もありました。
1日目の講義終了後には懇親会も催されました。講師の先生や同期受講生の先生達とも交流ができ、様々なお話ができました。2日間とも非常に充実した時間を過ごすことができました。今回のKIRG認定講習会で出会った方々との繋がりも今後の講義を通じて関係を深めていきたいですし、大切にしていきたいと感じています。
また今回学んだことを臨床に活かしていけるように更に励んでいきたいと思います。
2024年度 九州インプラント研究会第1回 講習会を終えて
30期 石森 昭二(大月デンタルケア)
1日目
・鮎川先生
インプラントの歴史についての講義になりました。本当に初期の頃は人体実験のようなインプラントをして、多くの患者さんの犠牲があり現在のような安心安全であるインプラントの材料や術式が確立されたのだと。特に驚いたのは義歯を口腔外からナートして留める方法はかなり衝撃を受けました。
当時としては画期的だったかも知れません、もしかしたら今行っているインプラントの術式も100年後の歯科医師から見るとそれぐらい衝撃を受けるのかなと思いました。
・阿部伸一先生
インプラントの為の口腔解剖についての講義になりました。実際に顎模型を用いた講義だったのでとてもイメージしやすく分かりやすい内容でした。今後もオペの際には動脈や神経、骨など気をつけることはもちろん、無闇やたらにインプラントを埋入するのではなく唇側の骨吸収の10年後20年後を見据えて治療計画を立てる必要があると感じました。
・湯浅先生
インプラント診療における画像診断支援についての講義になりました。
特に気になったのはコーンビームCTの所でした。自分の医院ではこのコーンビームCTは無く普通のCTで読影をし診断しているので、他の医院さんの見学の際には導入されている所を目安に行こうと思います。
また改めて被曝の分類についても学び直し、防護の三原則と職業被曝、医療被曝などについては今の学生はこういった国家試験を受けているんだと知りました。今は大学や学生とは縁が無くなってしまったので今の流行りの問題を知れて良かったです。
2日目
・和泉先生
天然歯とインプラントの組織学の違いについての講義になりました。もちろん大学生の時にこの単元は学んでいましたが改めて勉強し直すととてもためになりました。
特にインプラント周囲炎のリスク因子として喫煙や糖尿病はもちろん、歯周炎と共通のred complexも原因であり一気に進行が進むことをこれからも患者やスタッフ教育に役立てようと思いました
・伊東先生
インプラントの医療安全についての講義になりました。医療安全で患者はもちろん、ドクターもスタッフも医院を守ることが重要であること。例えばヒヤリハット対策も病院によって細かい部分が違うこと、特に伊東先生の病院で行っているリーマーの針刺し対策や圧排糸取り忘れ対策などスタッフ(現場)からの意見で少しずつ環境を良くしていく姿勢は素晴らしいと思いました。またこういったKYTという危険予知トレーニングはとても参考になったので今度自分の医院でも実践してみようと思いました。
・阿部先生
クリニカルパスと全身疾患の影響についての講義になりました。父権主義(パターナリズム)という考えは昔の考えであって、今はリバタリアンパターナリズムという患者が色んな説明を受けた上での自己決定する。こういったインプラントに限らない治療の選択肢を患者さんに与えて、誘導するのではなく治療の選択を後押しするナッジが重要であることを学びました。
2024年度 30期 KIRG 感想文
古内 聖弓(古内歯科クリニック)
1日目
【インプラントの歴史 インプラントシステムの種類と表面性状】
担当:鮎川保則先生
インプラントの歴史について、実例を交え分かりやすく解説していただき、歴史の苦手な私でも楽しく学ぶことができました。インプラント体がどのようにして現在よく見られる形態や材料へと変化したのか、インプラント体にとって重要な表面性状とは何か、深く考えるきっかけになりました。自分でインプラント埋入手術を行う際は、使用するインプラント体の材質や形態をしっかりと考えて選択する必要があると学びました。
【顎顔面 インプラントのための口腔解剖学】
担当:阿部伸一先生
口腔解剖学は、基礎において一番復習したいと思っていた分野でした。外科と関連付けた横断的な学習をすることができ、とても勉強になりました。特に問題となる舌神経や舌下動脈の位置関係については、患者さんの口腔内から読み取るのは難しいと思っておりましたので、目から鱗が落ちるようでした。明日以降、自信を持って粘膜の切開、粘膜骨膜弁の剥離翻転ができると嬉しく思いました。
【インプラント診療における画像診断支援】
担当:湯浅賢治先生
今までデンタルやパノラマ、MDCT、CBCT、MRI等を撮影オーダーする際は、疾患毎に分けてオーダーするものを考えていましたが、今後行う処置や読影したい部分も考えて選択するべきと学びました。特にいつも、MDCTとCBCTの選択で迷い、撮像範囲が狭いなどの理由でMDCTを選択しがちでしたが、症例によってはCBCTが有用であるということは新たな視点でした。また、パノラマやCTよりMRIの方が、下顎管が明瞭に描出されることを初めて知りました。MRIを撮影した際は是非確認したいと思います。
2日目
【天然歯とインプラントの相違 解剖・細菌・免疫】
担当:和泉雄一先生
インプラント周囲炎は、以前より関心を持っていたテーマです。その病態については歯周病と類似する部分が多いと思っておりましたが、歯周病より進行が速く、細菌叢も全く同じではないということを改めて認識しました。歯周病はテレビのCM等で周知されていることもあり、患者さんから質問を受けることが多いですが、インプラント周囲炎についてはあまり知られていないように思います。今回得た知識は、メインテナンス時により分かりやすく患者さんへ指導する際に利用したいと思いました。
【インプラント診療における医療安全の確立】
担当:伊東隆利先生
歯科治療は手術室で行われない外科治療だ、と聞いたことがあります。それ以来、外来ユニットで歯科治療を行う際は、清潔域や滅菌物に関して、とても気になるようになりました。伊東先生がおっしゃられたように、一番コストがかかる部分は一番患者さんに見えない部分だと思います。しかし、その部分を敢えて真面目に取り組むことで、安全かつ安心して診療を行うことができると思っております。医療人としての良心について改めて考えさせられた講義でした。
【医療面接とインフォームドコンセント・クリニカルパス・全身疾患の影響】
担当:阿部成善先生
現在の医療において、問診とICは一番基本的な部分だと思います。実際の臨床においても、歯科治療以上に時間がかかっているように感じます。それに対して面倒に感じていたことがありましたが、今回の講義で治療に移る前に一番重要な部分であり、時間を割くべき事柄なのだと理解しました。また、歯科では全身疾患が関係ないと考えている患者さんも多く、お薬手帳を持参されていない方がほとんどです。患者さんだけでなく、自分の身を守るためにも、しっかりと術前問診を行うことは必要不可欠だと改めて認識しました。
【第一回認定講習会を終えて】
インプラント治療だけでなく、普段の臨床にも生かせる知識を得ることができ、とても充実した時間を過ごすことができました。今後も多くを学び、吸収して、歯科医師として成長できるよう精進していきたいと思います。今後とも、よろしくお願いいたします。
開講式 緊張の顔立ち
森永太会員の力強い開講式挨拶
KIRG創立者 故添島義和先生の遺志を伝える伊東隆利会長の式辞
受講生代表 平井淳也先生の挨拶
鮎川保則先生「インプラントの歴史インプラントシステムの種類と表面性状」の講義
阿部伸一先生「インプラントのための口腔解剖」の講義
湯浅賢治先生「インプラント診療における画像診断支援」の講義
食い入るような眼差しで聴講
和泉雄一先生「天然歯とインプラントの相違 解剖・細菌・免疫」の講義
伊東隆利先生「インプラント治療における医療安全」の講義
質問多い受講生
阿部成善先生「医療面接とインフォームドコンセント、クリニカルパス・全身疾患の影響」の講義
楽しかった懇親会後、熊本城をバックに受講生と講師とKIRG会員