KIRG第2回認定講習会 受講感想文
第31期 竹下綾子 (たけした歯科 福岡県)
1日目
「インプラント治療に必要な咬合の知識」 永井省二先生
咬合について講義していただきました。天然歯とインプラントの連結は、短期的には問題はないが、長期的には補綴装置やインプラントの生存に影響すると考えられ、原則としては連結を回避するが、どうしても避けられない場合は強固な固定とすることが望ましいということを学びました。個々の患者さんにとってベストな選択をすることの難しさを痛感させられました。
「生体力学的観点から見るインプラント補綴のガイドライン」松下恭之先生 インプラントの上部構造の印象時の精度検証法について講義していただきました。最近は光学印象も普及してきましたが、症例によってはシリコン印象しなければならない場合もあるので、実践してみようと思います。
「医療面接とインフォームドコンセント」「クリニカルパス全身疾患の影響」 阿部成善先生
インプラント治療の薦め方と顎骨壊死について講義していただきました。日々、診療で欠損補綴のブリッジや義歯、インプラントについて説明していますが、効果的なインプラントの薦め方をそれほど深く考えることはあまりありませんでしたので、もう一度初心に返って考えさせられました。また、顎骨壊死についてですが、原則として抜歯時にARAを休薬しないこと、Dmab製剤も中止しないことが望ましい、ということをデータに基づいて改めて確認できました。
2日目
「インプラントの生理学」 井上富雄先生
生理学の咀嚼と反射と咬筋について講義していただきました。生理学をまともに勉強するのは国家試験の時以来でしたので、我ながら記憶が薄れていることに驚いてしまいました。普段は臨床ばかりなので、改めて咀嚼というのはいろいろな身体の組織の感覚や反射が組み合わさって起こる行動なのだと実感しました。
「診査項目プロトコール」 森永大作先生
インプラントの手術時の診査項目、について講義していただきました。インプラント全周には最低1ミリ以上の骨量が必要であること、インプラント体とインプラント体の間隔は3ミリ以上離すこと、インプラント体と天然歯との間隔も可能なら2ミリ以上(最低でも1,5ミリ)離すこと、のルールを再確認しました。
「インプラント体と生体の反応(病理組織学)」 井上孝先生 創傷の治癒についての病理を講義していただきました。創傷(損傷)を治すのは肉芽組織なので、修復を邪魔するもの(細菌感染、異物、抗原性物質)だけ除去できれば、理論的に肉芽組織を掻爬する必要はない。ということを学びました。インプラント周囲炎は起こらないのが理想ですが、起きてしまった場合は今回学んだことを臨床に生かしていきたいと思っています。特に、喫煙習慣があったり糖尿病を患っている患者さんは気をつけて診ていかなければならないと思いました。
どの講義も、大変興味深く勉強になるお話ばかりでした。最後の11月まで頑張りますのでよろしくお願いいたします。
KIRG第2回認定講習会 受講感想文
第31期 円林秀治 (えんりん歯科クリニック・福岡県)
1日目
① 永井 省二 先生 「インプラント治療に必要な咬合の基礎知識」
インプラントと天然歯について→
a)インプラントと天然歯の咬合接触の強さを変える必要はない
b)インプラント補綴は天然歯とほぼ同等の咬合面形態で良い
他にもインプラントと天然歯の連結、咬合の与え方などの解説から始まり、
咬合理論の歴史、下顎位の変遷も詳しく解説がなされた。
COを作り、その時の下顎の位置がCRと思った方が考えやすい、と言われたことに
確かにイメージしやすいな、と感じた。
追伸:懇親会から3次会までご一緒していただきありがとうございました!!
遅くまですみません笑
② 松下 恭之 先生 「生体力学的観点から見るインプラント補綴のガイドライン」
インプラント径、長さによる応力違いの解説から始まり、
オーバーロードを生み出す要素(カンチレバー、咬合面幅、ミスフィットなど)に
ついて教えていただいた。
後半は精度不良による上部構造の再製を回避するための上部構造作製の手順や
印象法の説明もなされた。
松下先生は大学時代に大変お世話になった先生のお一人であり、久々の再会で
あったが、
開口一番「大きくなったなぁ。」、人間的なことかと一瞬嬉しく思ったのは束の間、
お腹に視線が、、、複雑な気持ちになった。
懇親会でもお話しさせていただきましたが、また今後ともご指導よろしく
お願いします。
③ 阿部 成善 先生
「医療面接とインフォームドコンセント、クリニカルパス全身疾患の影響」
歯科治療中の患者は大抵恐怖や不安を抱えている。
インプラント治療においても同様で、治療内容による不安、咀嚼への不安、
経済的な不安など多種多様な不安を患者は抱えている。
それらを全くゼロにすることは困難であるが、少しでも解消するためには極力
患者が納得するまで細かい部分まで理解しやすい説明を行う必要がある。
術者にとって当たり前のことでも、患者にとっては理解困難な内容もあるため、
常に患者の理解度を確認しながら進めていく必要性を感じた。
特に治療することのメリットを説明することも必要であるが、それ以上にデメリットの説明についても時間をかけなければならない。
講義後半には医療広告規制におけるウェブサイトの事例についても解説がなされ、
「〜専門医」の表記は院内の掲示には問題ないが、ホームページ上で表記することは現状できないことを教えていただいた。
「インプラント専門医」を運良く取得できた際には表記できるような時代になっていて欲しい。
2日目
① 井上 富雄 先生 「インプラントの生理学」
食べ物の風味は味覚だけでなく、中咽頭を通って出てくる口中香も大きく
関与している。
咀嚼は哺乳類の高い活動性を支えるものであり、爬虫類と違い歯根膜と筋紡錘を持ち
哺乳類だけが優れたセンサー(感覚受容器)を持っている。
日本は超高齢化社会であり、2040年には1人の高齢者を1.5人の現役世代で支え
る。
厚生労働省からタンパク質の1日推奨摂取量が発表されているが、18歳〜29歳
男性は86〜133g、65歳〜74歳は90〜120gと言われており、年を重ねても
摂取推奨量に差はそれほど無い。
タンパク質摂取量が減ると筋力量が減るので最近焼肉屋では若かりし時より多くの
量を食べれなくなってきたが、今後は少し無理してでもビールと共に摂取しよう
と思った。
追伸:日曜朝一の講義で勉強させていただく前夜、懇親会にて同じテーブルで
楽しい時間を過ごさせていただきありがとうございました。
② 森永 大作 先生 「術後フォローアップ、診査項目、プロトコール」
インプラントの長期安定を達成するためには術前の診断や治療計画が重要となる。
インプラント手術時の診査項目には骨幅、骨質、インプラント間距離、天然歯との
距離などがあるが、それらについて詳細な解説がなされた。
インプラント周囲溝へのプロービングは周囲組織に対して侵襲や破壊を加えないよう
軽圧で行わなければならない。
その際、プロービング後、約5日で周囲溝は完全に回復する。
講義後半にはインプラント周囲炎の臨床所見や対応について話された。
③ 井上 孝 先生 「インプラントの病理、病態学」
インプラント周囲粘膜炎、周囲炎を予防するためにはインプラント周囲に細菌を残さないようすべきであり、口腔内を清潔に保ことが重要である。
金属アレルギーはパラジウムに反応する人が一番多いが、金銀パラジウム合金に反応する人は少ない。
細胞がないと再生は行われず、例えば歯のエナメル質、目の水晶体は再生が行われない。
抜歯窩の治癒過程には生活反応期、創内浄化期、組織修復期、組織再構築期とあるが、
抜歯早期加重は感染が無い状態であれば肉芽組織が作られるこの時期から行った方が
良い。
論文を多く読むことの重要性を話されたが、その際は懐疑心を持って読む必要性がある。
4月からスタートした講習会もあっという間に第2回(1/4)が終了しました。
毎回多くの知識を吸収させていただいていますが、引き続き気を引き締め頑張ります。
KIRG第2回認定講習会 受講感想
第31期 上田 祐介 もりみつ歯科・こども歯科(福岡)
永井省二先生 「インプラント治療に必要な咬合の基礎知識」
様々な咬合理論がある中で、その歴史と変遷を丁寧に紐解きながら、現存する理論の共通認識 や現在のコンセンサスを明確にご提示いただき、知識の整理と理解が大いに深まりました。顎位 の診査・評価の重要性や、立位・姿勢への影響など、全身との関連にも着目した診療の考え方は 非常に印象的でした。咬合を「減らす」だけではなく、「足す」ことも時には必要という思考は 今後の診療で忘れないようにします。
松下恭之先生 「生体力学的観点からみるインプラント補綴のガイドライン」
インプラント補綴における生体力学的視点の重要性を改めて認識しました。インプラント体の 選択や補綴装置の形態、印象採得の精度など、力の影響を考慮した診療の必要性を、実際の症例 を通じて学ぶことができました。特にOverloadが与える骨や補綴装置への影響、ミスフィットの 検証法など、今後の臨床にすぐ活かせる知識が多かったです。
阿部 成善先生 「インフォームド・コンセント インプラント治療の薦め方」
インプラント治療におけるトラブル回避のためのインフォームドコンセントや同意書作成、有 病者への対応など、臨床に直結する重要な内容を学ぶことができました。全身疾患や医療広告規 制、薬剤関連顎骨壊死への理解も深まりました。問診や説明は、治療以上に重要な工程であると 再認識しました。患者の自己決定を尊重するプロセスの重要性にも共感し、今後の診療に活かし たいと感じました。
井上富雄先生 「インプラントの生理学」
咀嚼運動における感覚受容器の重要性や、歯根膜や筋紡錘の役割がエネルギー摂取効率に直結 することを学びました。インプラントでは歯根膜が欠如するためオーバーロードのリスクがあ り、咬合調整の重要性を再認識しました。また、日本人の食への感性や文化的背景と口腔機能と の関わりにも触れ、興味深く感じました。咀嚼が脳の活性化にも寄与する点は印象的で、生理学 への理解も深まりました。
森永大作先生 「術後フォローアップ・診査項目」
インプラント治療の成功には術前診断から術後メインテナンスまで一貫した管理が不可欠であ ることを再認識しました。骨の状態や周囲組織の評価が術後トラブルの予防につながる点は特に 印象的でした。また、インプラント周囲炎や粘膜炎の適切な診断と対処法、さらに全身状態を考 慮した治療判断の重要性も学び、歯科医療が技術だけでなく包括的な視点を必要とすることを実 感しました。今後の臨床にしっかり活かしていきたいです。
井上孝先生 「インプラントの病理・病態学」
インプラント治療における病理学的視点の重要性を学びました。インプラントは生体にとって
異物であり、感染が生じれば排除されるリスクがあるため、予防の徹底が不可欠であると再認識
しました。また、上皮を貫通する構造的特性や、感染がなくとも骨吸収が起こりうる点など、病
理的観点からのリスク管理の必要性にも納得しました。創傷治癒や埋入時期に関する知見も得ら
れ、今後はより多角的な視野で治療に取り組んでいきたいと感じました。
永井省二先生 「咬合の知識」
松下恭之先生「インプラント補綴のガイドライン」
阿部成善先生「医療面接・インフォームドコンセント・クリニカルパス」
活発な質疑応答タイム
活発な質疑応答タイム
活発な質疑応答タイム
加来敏男会長よりワンポイントアドバイス
井上富雄先生「インプラントの生理学」
森永大作先生「診査項目プロトコール」
井上孝先生「病理組織学」