2023年度 認定講習会第2回 報告

2023年度 九州インプラント研究会 第2回講習会を終えて

 

第29期  義村泰蔵   ふるの歯科医院(佐賀県武雄市)

 

2023年5月20日(土)、5月21日(日)の2日間にわたり熊本市国際交流会館にて第2回講習会を受講致しましたので報告させて頂きます。

 

1日目 午前の部 前半(阿部成善先生)

医療面接とインフォームドコンセントについて講義して頂きました。

インプラント治療は外科治療なので私たち歯科医師は深い知識と高度な手技にばかり目が行きがちですが、インプラント治療は患者様との信頼関係の元成り立つ治療であり、患者様の全身状態(現病歴、既往歴、服用薬など)を把握することに加え、患者様の背景(性格、生活状況、治療に対する思いや不安など)を知ることが重要であり、そのことが患者様との信頼関係構築に繋がり、ひいては術者、患者様双方にとってスムーズに治療を進めることが出来るということを学ぶことができました。

 

1日目 午前の部 後半(阿部成善先生)

クリニカルパスと全身疾患の影響について講義して頂きました。

インプラント治療を行うにあたって、患者様側の状況(支払える費用、通院できる頻度など)を考慮しながら検査の予定や治療の内容、補綴物が入るまでに要する期間などを患者様が理解できるように丁寧に伝え(説明不足による患者側との認識のズレを避けるため)、患者様の自己決定権を尊重することが大切ということを学びました。また医療事故(原因として医療側の知識不足や技術の未熟性、医療機器や医療材料の欠陥、ヒューマンエラーなど)防ぐために必要なこととして①マイナス情報の共有化、②透明性や自立性の必要性、③職場の円満な人間関係、などハインリッヒの法則を交えながら講義して頂きましたが、どれについても普段全く意識していないことだったため、改めてしっかり見つめ直すきっかけになりました。

 

1日目 午後の部 前半(松下恭之先生)

生体力学的観点から見るインプラント補綴のガイドラインについて講義して頂きました。

松下先生の講義では①インプラント径・長さと骨内応力の関係について ②オーバーロードとインプラント治療の偶発症について ③天然歯とインプラントの連結について、などどれも臨床に直結する貴重な内容を松下先生の臨床経験を交えながら話して頂きました。講義の中では、実際に松下先生が施した多くの症例を拝見することができたのでとてもイメージがつきやすく、インプラントの長期予後と維持安定には力学的因子のコントロールがとても重要になることを熟知することができました。

 

1日目 午後の部 後半(原俊浩先生)

インプラント手術と直結した局所解剖について講義して頂きました。

講義の中では、主に下歯槽神経(オトガイ神経)・舌神経・大口蓋神経などの神経質系と下歯槽動脈・舌動脈(舌下動脈)・オトガイ下動脈・後上歯槽動脈などの動脈系について話をして頂きましたが、解剖については学生時代以来まともに勉強したことがなかったため、自分自身の浅学を痛感する事になりました。加齢に伴う骨吸収によりオトガイ孔の相対位置が変化することや歯槽頂から舌下動脈・オトガイ下動脈との距離が短くなるので下顎インプラント埋入時には穿孔などに注意が必要ということなど、どれも将来の自分自身にいつ起きてもおかしくない内容で、改めて解剖学の教科書を一から勉強し直さなければと思うことができました。長

 

2日目 午前の部 前半(井上富雄先生)

インプラントの生理学について講義して頂きました。

「哺乳類のみが優れたセンサー(感覚受容器)を持つ」というダイナミックなタイトルから始まり、それでは歯根膜を持たないインプラントがどのようにして歯に加わる力や方向を感知するのか?など、普段一般臨床しているだけでは到底触れることはできない内容のお話を伺うことが出来ました。またインプラントは従来の補綴(義歯、ブリッジ)に比べて咀嚼能力が高く、高齢者における摂食量の低下による栄養不良の改善や脳血管障害・心疾患・悪性新生物の予防に繋がるなど、超高齢社会にある日本におけるインプラントの意義をさらに見出すことが出来ました。

 

2日目 午前の部 後半(森永大作先生)

診査項目、プロトコールについて講義して頂きました。

インプラントの長期安定のためには術前の診査診断・治療計画、そして術後のフォローアップが重要ということで、森永先生が実際に診療で取り組んでいる診査項目、並びに術後の合併症に対する対応策を示して頂きました。

何か問題が起こった時に、早期に対応し、病状の進行を最小限にとどめるためにも、院内におけるプロトコールをスタッフ全員が理解し、共有するということが重要になると学ばさせて頂きました。

 

2日目 午後の部 後半(井上孝先生)

インプラント体と生体の反応(病理組織学)および口腔検査学と全身疾患について講義して頂きました。

「創傷を治すのは肉芽組織であり、肉芽組織の量しか治らない」講義の序盤でのこの言葉を聞いて、肉芽=掻爬と考えていた自分がいかに普段の臨床において術野を組織・細胞レベルでみていなかったか痛感させられました。①インプラント体は非自己であり、生体にとって異物とみなされること、②インプラント体は粘膜を貫通している開放創であること、③創傷治癒を邪魔するものとして細菌感染、異物、抗原性物質などが挙げられる、などこれらのことを鑑みると、口腔内で埋入されるインプラントがいかに感染・炎症と隣り合わせにあるものかと考えさせられ、その治療を行う歯科医師の責任はとても大きく、生涯に渡り研鑽を積まなければならないと改めて認識することができました。

 

以上、2日間にわたりとても内容の濃い、充実した時間を過ごすことが出来ました。残り半年間、一言一句逃すことがないよう必死に学んで行きたい思います。


第29期 九州インプラント研究会認定講習会第2回 感想

 

古賀 一旭   古賀歯科医院(福岡)

 

2023年5月20日、21日に熊本市国際交流会館にて受講しました。

 

まず初めに、COVID-19が少なからず未だに影響がある中、感染防止対策や、多くの関係者の皆様の尽力により、素晴らしい講習会を受けられていることに感謝申し上げます。

 

5月20日 9時~12時

医療面接とインフォームドコンセント・クリニカルパス・全身疾患の影響

阿部 成善先生

 

阿部成善先生は、インフォームドコンセント、患者様の不安などに対する様々な対応の仕方、インプラント治療における歯周病と糖尿病の関連について、医療広告についてを軸に講義していただきました。患者様は我々が説明することの約半分しか理解してないことを理解して患者様それぞれに合った説明などをして、トラブルなどを避けていかなければいけない。医療広告に関しては新しく掲載可能になったことや掲載に関して注意しなければならないことも講義していただき自分の病院のホームページもしっかり確認しようと思います。

 

13時~16時

生体力学的観点から見るインプラント補綴のガイドライン

松下 恭之先生

 

松下恭之先生は、インプラント補綴について講義していただきました。インプラント補綴に関しての印象採得の方法や、暫間上部構造の意義などとても興味深い講義でとても勉強になりました。傾斜したインプラントでの上部構造連結においては、外部連結でも内部連結でもアバットメントレベルでの印象が最良であることも知りました。他にも精度検証法の5つの方法なども実践的な知識も教わりました。また、破折スクリューに関する豆知識として話して頂いた内容も日々の診療に役立つ知識が増えとても有意義な講義を受けることができました。

 

16時~18時

インプラント手術と直結した局所解剖

原 俊浩先生

 

原俊浩先生は、インプラント手術と直結した解剖学について講義していただきました。実際の症例を交えてお話していただき、先生が直面した困難なケースなどのお話はとても印象に残りました。その他、オトガイ孔についてCTなどでよく確認しないと患者様によってかなりの個体差があることを知り驚きもあり勉強になりました。インプラントと直結した解剖学の話を聞くと少し怖く感じてしまいますが、講義でしっかりと解剖学を理解し正しい知識をつけていかなければいけないなと強く感じさせられました。

 

5月21日  9時~11時

インプラントの生理学

井上 富雄先生

 

井上富雄先生は、インプラントの生理学について講義していただきました。咀嚼とはから始まり、歯根膜、筋紡錘の咀嚼に対する役割や、インプラントと咀嚼の関係性についてまで詳しく講義していただきました。感覚受容器、特に歯根膜受容器については、生理学的観点から深く解説していただきとても勉強になりました。またインプラント補綴は従来の補綴方法と比べて咀嚼能力の改善にどのくらい優位になるのかついても生理学的観点から充分に理解できました。この講義で勉強した咀嚼について日々の診療に生かしていきたいと思います。

 

11時~12時

術後フォローアップ・診査項目・プロトコール

森永 大作先生

 

森永大作先生は、術後のフォローアップと診査方法論について講義していただきました。術前のリスクの同定、分析、評価及び術中の診査(骨幅、骨質、インプラント間距離、天然歯との距離)が術後のメインテナンスを行う上で重要になってくることを理解しました。術後のメインテナンスについては、歯周病学的検査法が有効で、プロービング時の圧や、プラスチック製のプローブを使う利点なども大変勉強になりました。

 

13時~16時

インプラント体と生体反応(病理組織学)

井上 孝先生

 

井上 孝先生は、インプラント体と生体反応(病理組織学)について講義していただきました。皮膚、粘膜の欠損は、開放創で細菌の侵入口であり、インプラントは粘膜を貫通している開放創であるということを大前提に治療やメンテナンスを行うべきだと分かりました。他にも肉芽組織についても詳しく講義していただき、日々の診療で起こってることが、病理学的に何が起こっているのか、何故起こっているのか、分かりやすい例え話を交えながら講義していただきました。今回の講義を聞いて炎症とは何なのかなど明日からの診療にも役立つ知識も増え非常に充実した講義でした。

 

今回の全ての講義は、非常に濃い内容であっという間の2日間でした。

来月からもまた講義を受けれることを楽しみにしています。


第29期 九州インプラント研究会認定講習会

 

第2回講習を受けて

 

馬場 寛一  せきかつひろ歯科口腔クリニック(熊本)

 

 

1日目は阿部成善先生、松下恭之先生、原俊浩先生に講義していただきました。

阿部成善先生はインフォームドコンセント、全身疾患の影響、ホームページにおける医療広告について主に講義していただきました。

説明する私たちはもれなく詳しく説明したとしても患者さんは同じようには理解してないということを理解したうえで、インプラントにおける説明同意書など後で見返せる資料や図や絵などわかりやすいツールを使って説明することで患者さんの不安を取り除けるようにしなければならないと感じました。インプラントだけでなく普段の診療から説明と同意の重要性を改めて再認識しました。

医療広告については開業していない私にとっては初めて学ぶ分野でした。症例の治療前後の比較写真も載せるだけでは不十分でそれに関する詳細な説明が必要ということを知り、ホームページ作成に関して他にも細かなルールがあって注意して作成しなければならないと感じました。

 

松下恭之先生はインプラントにおける力学的な観点の講義をしていただきました。

インプラントの径や長さの違いによる骨への応力の違い、カンチレバー、天然歯との連結などインプラントの設計にかかわる大変勉強になる講義でした。

 

原俊浩先生はインプラント手術における解剖学的な注意点について講義をしていただきました。インプラントだけでなく観血的処置をするにあたって知らなければならない重要なものだと再認識しました。抜歯後の骨吸収に関しては前歯の骨吸収を止めるのが非常に難しいことを学びました。

 

2日目は井上富雄先生、森永大作先生、井上孝先生に講義していただきました。

 

井上富雄先生はインプラントの生理学について講義いただき咀嚼についての理解が深まりました。抜歯による脳の活動性の低下がインプラントによって抜歯前よりも活動性が増加していたところがとても印象的でした。

 

森永大作先生は術前から術後にわたる審査項目について講義していただきました。実際に患者さんに対してプロトコールを用いて一つ一つの評価項目を評価して術中、術後長期にわたってトラブルなく未然に防ぐことの重要性を学びました。プロトコールに沿うことで患者さんの安心につながるだけでなく私たち歯科医師側も情報の整理、リスクが予測しやすくなりインプラント治療の成功につながると感じました。

 

井上孝先生は病理組織学について講義いただきました。インプラント体と生体の反応、骨補填材と生体との反応など様々な場面での病理組織学的な理解をすることでインプラント体や骨補填材の種類の選択に役立つと感じました。

 

今回の二日間も前回同様、多くのことを学ぶことが出来ました。

貴重な時間を割いていただいた先生方、事務職員の方々に感謝申し上げます。

ここで学べることに感謝して最後まで知識、技術を吸収していきたいと思います。

次回もよろしくお願いします。

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