2021年度 公益社団法人日本口腔インプラント学会 認定講習会第2回 報告

KIRGを受講して(2021.5.16-17)

第27期 古宮宏記 こみや歯科医院(東京都葛飾区)

 

5月のKIRG 100時間コースが行われました。

井上富雄先生にはインプラントの生理学をお話しいただきました。天然歯は歯根膜支持でインプラントは骨支持であり、前者は歯根膜機械受容器と筋紡錘の2つの並行、後者は咀嚼筋の筋紡錘の単列になることから、感覚受容にも差異があるものの、咀嚼能力はかなりの改善が見込まれることがわかりました。また生理学的観点から、抜歯による脳の活動低下は、抜去部によるインプラント埋入および植立で回復するということを、論文を交えて説明いただきました。

森永大作先生には貴重な症例を示していただきながら、インプラントにまつわる検査項目についてご講演いただきました。今後症例の統計を行い、専門医取得を目指す場合、非常に重要だと考えました。

澤瀬隆先生にはインプラントの局所検査と治療計画について、重厚なスライドを用いながら3時間以上の長丁場講義してくださいました。補綴学分野の臨床を軸とした、数々の材料学や動物実験のデータを用いながらご教授いただきました。従来用いられていたOsseointegrationとはただチタンと骨が光学顕微鏡のレベルで直接的に一体化した状態のことを示していたが、インプラント術者にとってのOsseointegrationは荷重が加わっているインプラント表面と生体骨組織の構造的かつ機能的結合であるというところが最も印象に残り、それに至る診査診断ももちろん必要ではあるが、それ以外にも機能性が大切であり、機能することで骨芽細胞の発現やコラーゲン線維の走行に変化が生じるということ、マクロ解剖レベルの根拠まで示しご教示いただき、目から鱗でした。

阿部成善先生には医療面接やクリニカルパスといった、いわば診査診断の状態から患者情報の収集の大切さ、トラブル回避やリスクマネージメントの重要さについて、自院で行われている事例を示しながらご講義いただきました。自分自身、常日頃の臨床で物凄く気を付けていること、患者へ提供する歯科医療の根本は準委任契約であって請負契約ではないということを改めて再確認させてくれました。インプラントのみならず歯科治療がもたらす可能性は非常に高い術式であり治療方法であるし、患者の期待に応えることはもちろん大切であるが、限界も当然あることを常日頃意識しながら仕事をしようと思いました。

井上孝先生にはインプラントの偶発症であるインプラント周囲炎について、特に病理学的観点から、細菌の発生により生じた天然歯の顎骨吸収における病態が歯周病であり、人為的に顎骨に埋入された人工物周囲の病態がインプラント周囲炎であることがよく理解できました。また時事的な事柄でCOVID-19がもたらす免疫機序やACE2受容体へ結合するメカニズムについてもお話しくださいました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴い、講習会の開催直前で全員Web受講に切り替わり、前回も一部Web受講に切り替わるという不測の事態の連続であったと思いますが、この渦中で快適に受講させてもらえる環境を構築してくれた現地熊本の先生や事務職員の方々、この時期に貴重な時間を割いていただきご講演いただいた先生に感謝しております。臨床家や大学教授経験者が教鞭に立つ有意義な勉強会に参加できたことに喜びを噛み締め、このまま最後まで食らいついてKIRG講師陣から吸収していきたいと考えています。

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第2回 KIRG受講 感想文

第27期 眞田知基 秋山歯科クリニック(東京都葛飾区)

 

井上先生

・咀嚼の進化について初めて聞き、進化に基づき歯の形態が進化し、それに意味があることも知れて興味深かった。また、圧受容器としての歯根膜、筋の長さセンサーとしての筋紡錘の咀嚼における役割をわかりやすく教えていただき、勉強になりました。

 

森永先生

・インプラントにおける埋入から、補綴、術後においてそれぞれ注意しておかなければいけないポイントについて学べました。

 

澤瀬先生

・インプラント治療指針に沿って講義されて、理解しやすかったです。歯を喪失した原因を理解しておく重要性を再度理解しました。また、骨質について今までZarbの分類しかしらず、その先の考え方について新しい知見を得ることができました。テーパータイプのアバットメントについても沈み込むことを考慮して咬合調整が必要なことも知れてよかったです。講義も面白く、理解しやすかったです。

 

阿部先生

・患者さんとのかかわりについて再考させていただけました。どのように考えられて、どういうことに不安を抱かれているのかをしっかり向き合っていきたいと改めて気持ちが引き締まりました。

 

井上先生

・3段論法での講義は理解しやすかったです。インプラントは異物であり、それを生体内に埋入するためにはしっかりと技術・知識が必要であると改めて認識しました。コロナウィルスのワクチンのメカニズムも勉強できてよかったです。

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九州インプラント研究会第2回講習会 感想

第27期 勝陽臣 都賀デンタルクリニック(千葉県千葉市)

 

1日目

井上富雄先生

井上富雄先生の講義では、咀嚼と脳との関連のメカニズムは興味深く、また動脈硬化や認知症などさまざまな全身的なリスクについて関連があるとのお話をうけ、高齢者だけでなく若い人にも予防の観点で咀嚼の重要さを臨床の場でお話ししなければいけないなと思いました。

 

森永大作先生

森永大作先生の講義では、インプラント周囲粘膜炎や周囲炎の対応についてのお話しが特に印象的でした。インプラントメンテナンスに関してはどう対応したらいいかはかなり曖昧な知識しかないので、今後起き得るトラブルに上手く対応出来なければなと思いました。

もっと自分でも深く勉強していかなければならないと感じました。

 

澤瀬隆先生

澤瀬先生の講義では、専修医取得について詳しくお話ししていただき、ケースプレゼンテーションに必要な事項を知れたので取得に向けて日頃の臨床から資料をとって準備をしとかなければなと思いました。

専門医を目指す場合には試験であったり、条件もまた増えて大変だと思いますが、早くから分かって準備しておけるのですごくありがたく感じました。

 

2日目

阿部成善先生

阿部成善先生の講義では、インプラント治療における患者さんとのトラブルの原因であるとか、医師側と患者側とのギャップ、認識の行き違いなどのお話があり自分も思い当たる節がいくつかあるので気をつけなければならないと再認識させられました。

治療の技術はもちろん必要ですが、それ以外の面で患者と良好な信頼関係を築くこと、文書による説明・同意をしっかりしていくことの大切さを感じました。

 

 

井上孝先生

井上先生は自分の大学の母校の先生でしたので学生の時授業を受けていて、講義内容も当時のように分かりやすくて懐かしく感じました。

普段臨床の場で炎症とは多く接していますし、患者さんに説明する際にも病理のメカニズムを上手く説明していくのに必要な知識だと思いました。

最近はこういった基礎を勉強する機会も減ってきてるのですごく貴重講義でした。

 

勝陽臣

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第2回日本口腔インプラント学会認定講習会 感想文

第27期 木村 裕 (千葉県東金市)

 

井上富雄先生

普段の臨床の場で意識していなかった口腔の感覚機能について、動物、生物の分類間の比較から始まり、学生時代の講義を思い出しながら確認できました。また、新しい知識も得ることもできました。この感覚機能の働きを意識することで臨床もまた違ってくるのではないかと思いました。

 

森永大作先生

最も印象強く残ったことは、インプラントを長期に渡り残存させるためには十分なフォローアップを遂行することが重要で、そのフォローアップは術前の診査、診断に影響されるということでした。資料の採取(口腔内写真やX線写真、模型)、顔貌、全身状態などの多岐に渡る診査を丁寧に行うことで、より正確な診断ができること、そしてそのことが長期に渡るインプラントの維持に繋がることを強く意識して実践していきたいと思いました。

 

澤瀬隆先生

森永先生の診査の重要性についての講義の後で、局所検査と治療計画についての講義でしたので、より意識して集中して講義を受けることができました。その中で先生がおっしゃっていた、喪失した原因は何か考え、その原因を踏まえて対応した治療計画をするということを意識していきたいと思いました。

 

阿部成善先生

インプラントに関するトラブルの多くは医療過誤事件としてではなく、消費者事件として消費者センターに持ち込まれ、大半が医療従事者側の態度の悪さなどメンタルな部分に起因しているという説明があり、全く意識していないことでしたので注意していこうと思いました。医療従事者はリスクの説明や、悪い結果の可能性などの説明をしているにも関わらず、患者は良い情報のみ記憶に残り、悪い結果は生じないという思いから両者間に差が生じ、クレームになることについて説明があり、自分でも義歯のケースであったが思い当たる節があり大変納得しました。

 

井上孝先生

理論、考え方の方法として三段論法を臨床例に適用しながら説明がありました。臨床で起こる事象を基礎理論やエビデンスに基づいた考え方を示して戴き、歯科医師としての診断、治療計画を学べる貴重な機会でした。

 

講義という枠を取り払って各講義の内容を関連づけて、まとめ整理を行い、より知識を深めていきたいと思いました。

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第2回講習会 感想文

第27期 鈴木 総史 井ビシ歯科医院(山梨県)

 

先月よりスタートしたKIRG100時間コース。初回・2回目ともに素晴らしい講師陣と、その濃厚な講義内容に圧倒される日々でした。今月も基礎と臨床の両方を学べるとのこと、この日をとても楽しみに参加させていただきました。インプラント治療というと技術や材料などに重きを置かれがちですが、生理学・解剖学の基礎の上に技術があり、何より医師と患者の人間関係の構築がとても大切だと感じました。今回は「安全に治療を行う」ということに焦点が置かれていたように思われました。

井上富雄先生には昭和大学の助教時代に摂食嚥下と基礎医学で講座としても大変お世話になりました。今回インプラントの生理学について大変わかりやすい資料で講義していただき、咀嚼についての理解が深まり、臨床に直結する内容を学ぶことができました。

森永大作先生による、術前から術後長期にわたるまでの診査項目・プロトコールの講義の中で、トラブルを未然に防ぐこと、早期に発見することの重要性を痛感いたしました。一つ一つ手順を系統立てることが患者様の安心・安全につながり、治療の成功につながると感じました。

澤瀬隆先生の講義からは、各メーカーのインプラントには得意・不得意があり、それをしっかりと理解し、適材適所に使用することの大切さを学びました。また、骨質の真の理解や欠損の分類も再度、学ぶきっかけになりました。伊東隆利先生や澤瀬隆先生のお話を聞く度に、専門医を取得するぞとモチベーションがあがります。

阿部成善先生の講義からは、日本人として大切な考え、誇りも同時に学びました。詳しい資料を用いて分かりやすい説明をしていただき、患者様のアンケートの理解も含め、3時間があっという間でした。トラブルを避けるための心構えもとても勉強になり、再度自分の中で反芻し、明日から気を引き締めて臨床に勤しもうと心に決めました。

井上孝先生による、たゆまぬ研究による長期の知見や、最新の知見を織り交ぜた病理学に関する講義には脱帽いたしました。これまで書籍や雑誌で勉強させていただいておりましたが、実際に講義を受けることができ光栄でした。

KIRGは、大学の教授陣の先生方と開業医のスーパーインプラントロジストの先生方が連携して講義をしてくださるので、様々な視点、切り口で症例にアプローチし、明瞭にしてくださる講義に多くを学ぶことができました。テーマに対しそれぞれのエキスパートの先生方が担当してくださり、その内容は非常に深く、興味深く拝聴させていただきました。基礎医学から臨床の最先端を学ぶことができ、すぐに明日の臨床に活かそうと思います。また、会の雰囲気が大変良く、私のような若輩者にはとても落ち着きます。過度な緊張や、上の先生や周囲の顔色を伺いすぎると本題に集中しにくくなるので、リラックスできる環境は重要だと思っています。柔らかい雰囲気を心がけてくださっているのが伝わり、大変有り難い限りです。以前から飯島俊一先生と原俊浩先生には多くを学ばせていただいており、医療姿勢に信頼の置けるものを感じておりましたので、是非KIRGにお世話になりたいと考えておりました。今回参加させていただきましたこと、改めて御礼申し上げます。

以上、大変僭越ではありますが感想を述べさせていただきました。今後とも各講師先生方および御同輩皆々様方、ご指導のほど何卒宜しく御願い致します。

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KIRG 第2回受講感想 2021年 5月

第27期 瀧上 裕(静岡県静岡市)

 

5月15、16日に令和3年度認定講習会第2回が行われました。熊本県も蔓延防止重点措置の対象地域に追加されたため、今回はWEBでの講習会となりました。前回に引き続き現地受講ができず、講師の先生方や同期の受講生にお会いできないことは残念ですが、WEBでも滞りなく内容の濃い講習会を受講することが出来ました。

 

1日目は井上富雄先生のインプラントの生理学の講義から始まりました。インプラントは歯根膜が無いため、天然歯とは違うという事を念頭にインプラント治療をする必要があると感じました。

森永大作先生の検査項目プロトコールの講義では、主にインプラント検査とフォローアップの重要性について勉強しました。正確な術前の診査診断と的確な術後のフォローアップがインプラントの長期安定には不可欠だと思いました。

午後は澤瀬隆先生の局所検査と治療計画の講義でした。特に骨質についての考え方は今までに無い見解だったので、とても勉強になりました。また、インターナルコネクションのインプラント体はねじ止めで少し広がるという内容は興味深いものでした。

 

2日目の午前中は阿部成善先生の講義でした。高齢化が進むにつれ、基礎疾患のある患者さんを治療する機会が増えていくため、一人一人に合わせた治療がより一層大切になると改めて実感しました。コミュニケーションについての考え方も勉強になりました。

最後は井上孝先生の病理組織学中心の講義でした。数年前歯学部生の頃に井上先生の講義を何度か受講しましたが、臨床を経験してからの講義は全然違う様に感じました。抜歯からインプラント埋入、そしてオッセオインテグレーションの獲得やインプラント周囲炎など様々な場面の病理組織学を理解することによって、埋入インプラントの種類や方法、補綴や周囲組織への対応などを良い方向に導けると思いました。

 

今回は臨床的なことはもちろんですが、基礎的な分野についての知識を深めることが出来たので、とても有意義な受講になりました。明日からの診療にさっそく取り入れていきたいです。

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